霊能力って人格者に宿る訳じゃないという話
プロフィールに「魔法使い」と記載していることだし、そちら方面の話も進めていこう。
霊能力とか、神通力とか、魔法とか、法力とか……そういうものは、決して徳の高い人、人格者に宿ると決まっているわけではない、という話だ。
ある種の力を高めるために日々のおつとめが必要であったり、功徳を積むことでご利益が増したり、能力を得るためには厳しい修行で精神を鍛える必要があったり、そういったことはあるのかもしれない。
けれど、何か能力を持っている者が皆「出来た人間」であるかと言えば、そんなことは無いと断言しよう。
……まぁ、以下はそんな身内の話だ。
私の祖父、母の父は、ガチの霊能者だった。
二つ折りにした厚紙に手刀を向けて気合をかければ(手刀を振り下ろしたり息を吐いたりするわけではない)すっ飛んで行ってテーブルから落ちたし、裁ちばさみのような重たい鉄製品が磁石のように素肌にくっついたり離れたりした。
病気で危ないことがあれば飼っている金魚が水槽を飛び出して祖父の椅子の上で死ぬこと数度(勿論、その直後に祖父は回復する)、身内からの連絡を嫌って何やら呪符を書き方位を合わせて壁に貼ると長期的に連絡が途絶え、部屋の模様替えで札を剥がすと直後に連絡がきた。
お祓いのような事もしていた。時々、私や両親を仏壇の前に呼び出して、念仏を唱えながら塩を取ったり背中を叩いたり。すると、場合によっては訳も分からず涙が出てくるし、大抵の場合はその晩にでも高熱を出し、一日二日で収まる。
代表的な出来事はこんな感じだが、細かいことを一つ一つ上げていけばまだまだキリがない。
一方で、人格的な問題点もまた、枚挙にいとまがない。
離婚と再婚を何度も繰り返してるし、母は虐待を受け、家政婦のように使われていたそうだ。未成年であった母がストレスから内臓を病み入院すると、こいつに払ってやる金なんて無いと言って医者と大いに揉めたこともあったと言う。
私の記憶にある限りでも、気に入らないことがあると良くて木刀、悪くて刃物を持ち出し、近所とトラブルを起こすことは度々だった。父も包丁で切りつけられて、数針縫う怪我を負ったことがある。
しかし常にそんな風に狂乱しているかと言えばそうでもなく、要するに祖父は極端な気分屋だった。
機嫌がいい時は非常に愛情深い態度で、特に孫には甘かった。今であれば、境界性人格障害、統合失調症、アルコール依存症、或いは若い頃に受けた脳のダメージがどうとか……そんな診断がつきそうな人だった。
密教だかなんだかでは悟りを得ると穏やかになるどころか非常に気性が激しくなるとも言うらしいが、祖父の能力が一体何に由来するものだったのか、今となってはわからない。
ひょっとしたら何かに憑かれていただけだったのではないかとも思うが、そっちは余計に確かめようがない。
ただ、目先に見える霊的な能力と人格には特に相関がなさそうだ、という感想を抱くだけである。
……だから、世の中に「まず自分を癒せよwwwwww」と言われるようなヒーラーや精神科に通院中のスピリチュアルカウンセラー、人生の方向を見誤ってそうなチャネラーが居たところで、全く何もおかしなことはないし、ひょっとしたらそれが自然な事なのかもしれない、と私は思うのだ。
私自身の事も含めて。